《もののけ姫とハンセン病、エボシの裏設定》

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ジブリアニメの「もののけ姫」で検索した際に、「ハンセン病」との組み合わせが多く検索されていることに気付く方も多いだろう。

これはもののけ姫の登場人物である「エボシ」が「タタラ場」という精錬所を経営していて、そこで働く人間たちの中にハンセン病患者を思わせる人間たちが存在するからだ。

宮崎監督も以前はその真相を明かさなかったものの、ある講演で「ハンセン病」との関係を初めて明らかにした。「そういう病を持った人たちを描く必要がある」と考えて意図して描写したとのこと。

この話しはYahoo!ニュースなどでも複数回話題にあがっていたので、既に知っている人も結構いるかもしれない。

また「もののけ姫」という題名にしてはエボシ様のシーンが異様に多いことも特徴の一つだが、これも意図的に思える。

この記事ではエボシ様に焦点を当て、ハンセン病ともののけ姫の関係、そして彼女をなぜ中心人物の一人に配したのかを都市伝説的に解説していきたい。

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もののけ姫で描かれた「ハンセン病」ってどんな病気?

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まず「ハンセン病」に対する基礎知識から簡単に解説しておこう。

ハンセン病とは空気感染する「感染症」の一種で、その感染力は大変弱い。現代では薬物療法で完治するし、たいして怖い病気ではない。またこの病気で直接死に至ることはめったにない。

ではなぜハンセン病が恐れられたかというと、適切な治療が出来なかった時代には「顔貌変形」という症状が起きたからだ。つまり顔が変形して醜い怪物のようになってしまうからだ。

そのため、この病気の患者は嫌われて隔離された。ハンセン病をめぐる記述は古くはエジプトの古文書にも見られるほど昔から知られた病気なのだ。ちなみにキリストがハンセン病患者を直したという描写も聖書に存在する。

日本においては光明皇后がハンセン病患者を入浴させて治療した(原因菌である「らい菌」は熱に弱い)という伝説があり、女性とハンセン病治療との関わりの歴史も深い。エボシ様の存在はこの伝説を意識したものだと見られる。

 

もののけ姫はいつの時代がモデル?

色々な描写からすると、架空の物語ではあるがもののけ姫というのは室町時代を舞台にしていると考えられる。この時代は応仁の乱以降の治安の悪い時期に当たるが、庶民が最も活躍した時代でもある。

そして戦国大名が台頭して「群雄割拠」(ぐんゆうかっきょ)する直前の面白い頃合いだ。この時代に来日した外国人の記述によると、最も目立ったのが女性の活躍だ。

海外では女性は地位が低く「経営」や「差配」なんてあり得なかったのだが、日本では女性が経営する廻船問屋(船を使った貿易で日本全国を廻る仕事)や小売業などが普通に存在した。

特に船を使った貿易で女性が力を発揮したという話もあり、この辺りがエボシ様の設定に関わっているとされる。そのエボシ様の「裏設定」に関しては次の項目で詳しく書きたい。

 

もののけ姫の宿敵、エボシ様の裏設定!

これは都市伝説ではなく、実際に宮崎監督等がインタビューで語っていたことをまとめた項目になる。まずエボシ様は奴隷出身である。さらわれて海外に売られたのが出発点だ。

室町時代では武士の姫がさらわれて売られてしまい、あまりの美貌から太夫となった「地獄大夫」という女性も存在するほど当たり前のことだった。エボシ様はこの地獄大夫以外に「立烏帽子」等の複数の女性がモデルになっている。

その後は倭寇(ベトナムあたりから中国までの沿岸を荒らした日本の海賊)の親分に買われて姉御として倭寇を差配するようになる。配下のゴンザはこの頃の手下で、もののけ姫の時代までずっと付き従って来たのだ。

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またもののけ姫が嫌う文明の象徴であるタタラ場は、倭寇のころに稼いだ金で作り上げたものだ。そして自分と同じように売られた女性やハンセン病で追い出された人たちを集めてタタラ場を経営している。

もののけ姫は憎悪しているが、タタラ場は大事な施設といえるのだ。

 

エボシ様はハンセン病患者を人間として扱っていない?

宮崎監督は、エボシ様を二十世紀の「理想的人間」だと答えている。目的と手段を使い分け、悪いこともするが理想は捨てない。失敗しても何度でも立ち直る。そういう点を理想的人間だとしている。

他の記事でも述べているが、作中でエボシで大怪我を負ったのに亡くならなかったのは本キャラに対する監督の想い入れとも言われている。

しかし、ハンセン病の患者や女性に対して言えば裏の顔も見えてくる。ある意味「ブラック企業」の経営者としての顔だ。

まずハンセン病の患者は行き場所が無い。また売られた女性も買い取って集めているが、これも行き場の無い人間たちである。見てわかるように、タタラ場は決して良い労働環境ではない。

アニメで確認すると24時間稼働しているので、労働時間も相当長い。行き場のない住み込み労働者を雇い、衣食住を保証する代わりにこき使うというのはまさにブラック企業を象徴している。

タタラ場の人間たちは外出できないので飲み食い以外に楽しみも無い。だからアシタカのような「客人」(まろうど=外部の情報や文化をもたらす人)が大歓迎される。

実際に存在した「タコ部屋」(炭鉱労働者や建設労働者を住み込ませて搾取する施設)と酷似していて、給料を払っているのかさえ定かではない。仮に給料をもらったとしても使い道や送り先のない人間を集めて労働者にしているという実態なのだ。

 

ハンセン病患者が働く「タタラ場」の本当の役割

まさに労働条件としてはブラック企業だ。しかし文化的には重要なものなのだ。

人類は「鉄器」を手に入れたので格段の進歩を遂げた。それまでは加工しやすい銅が主に使われてきたのに対して、鉄が武器として用いられるようになって戦争は鉄を多く持っている側が勝つようになったのだ。

室町時代は些細なことが大きな争いになるという物騒な時代で、同時に武士が勢力を伸ばしてきた時代でもある。つまり争いは絶えることが無く、その道具として鉄は高い値で取引されていたのだ。

また刀も江戸時代の「刀」より室町時代の「太刀」の方が質が良いとされている。タタラ場はその鉄を「」として生産する武器商人の中心地という役割を持っていたのだ。

また当時は人間が森に入り込み、支配を広げていった時代でもある。つまり開拓して田畑を増やすことで収入を上げ、山や森はどんどんと開墾されて田畑に変わっていった。

これがもののけ姫との対立のきっかけだ。まさにもののけ姫からするとタタラ場は憎んでも憎みきれない憎悪の対象となる施設で、その中心であるエボシ様を宿敵に掲げた訳だ。

 

もののけ姫(サン)がエボシの娘だった!?

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その都市伝説とは、ずばり「エボシ=もののけ姫(サン)の母親」というものだ。これは研究本に載っていて広まった話だ。

もののけ姫は、人間が生け贄(いけにえ)として差し出した娘であるとアニメの中でモロが語っていた。そしてその出生についてはどこにも情報が無い。

サン」という名前については「三の姫」から来ている。これは公式に宮崎監督が語っていて常識的に考えれば武士の姫になるので、都市伝説ではない。

ここまで「もののけ姫」にまつわるハンセン病とエボシ様の関係について語ってきた。ちなみにジブリアニメのほとんどは女性が主人公であり、若くて元気な女の子が中心として描かれている。

その点でもののけ姫は珍しい存在なのかもしれない。このアニメを観る際には、是非エボシ様に注目して頂きたい。

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