【紅の豚の都市伝説】裏話や制作秘話が面白い!
何と言っても都市伝説として面白いのは、プロモーション時のジブリお家騒動だろう。なにしろ宮崎監督とジブリメンバーで意見が食い違って大騒動になったのだから…
事の発端は「紅の豚」のプロモーション映像を鈴木プロデューサーが編集したことから始まる。鈴木氏は派手な空中戦のシーンを中心にビデオを作ったのだ。
これは興行成績を上げたいプロデューサーとしては当然の行為であり、責められる点など無い。しかし宮崎監督がこれに噛み付いた。
「これは鈴木さんが勝手に作ったもので、紅の豚はこういう作品じゃない」とマスコミに発表してしまった。実はポルコ・ロッソのモデルは監督本人ではないかと都市伝説では言われている。
宮崎監督としては思い入れのある作品で「疲れた中年男の癒し」というテーマを隠しており、自分自身を否定してみせる複雑な男の感情を描いているつもりだったという。
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それを「派手な空中戦のあるアクションアニメ」だと宣伝されて怒ってしまったのだ。しかし鈴木氏としても、公然とプロモーションを否定されてしまっては引っ込みがつかない。
そこでジブリのスタッフにこのプロモーションビデオで良いかという投票をさせた。その結果「このビデオで良い」と大多数が賛成。
それで宮崎監督は猛烈に機嫌を悪くして、公開が危ぶまれたのだ。結局は鈴木氏が頭をさげる形で決着したというが、一時はスタジオジブリを割る大騒ぎになったのだ。
まさに都市伝説では無いだろうか。色々あった「紅の豚」だが、この記事では資料を漁ったトリビアから都市伝説的推理まで交えてお届けしたいと思う。
これがモデル?紅の豚、水上機の謎
紅の豚でポルコの乗っている真っ赤な水上機は「サヴォイアS.21F」ということになっているが、実際にはサヴォイアに該当する形のモデルはない。この時点で都市伝説だ。
実はサヴォイアS.21Fというモデルはあるのだが、これは複葉機でアニメに出てくるような形では無いのだ。アニメでポルコの乗る水上機は、頭の上にエンジンがある非常に珍しい形をしている。
実は宮崎監督は「風立ちぬ」でもわかるように「飛行機」に大変な思い入れがある。
「未来少年コナン」のギガントから「ナウシカ」のメーベやガンシップ。また「ハウルの動く城」の空中戦から「魔女の宅急便」のほうき、飛行船、空飛ぶ自転車に至るまで…空を飛ぶことはジブリアニメでの重要な表現になっている。
それなのに架空の機体を描いてしまったのは宮崎監督の記憶の混乱からで、実際のモデルは「マッキ.M33」という機種だ。
これはイタリア製の優美な機体にアメリカのカーチス製エンジンを載せた競技用の飛行機で、無骨なエンジンを隠すために流線型のカバーで覆ってある。
この機体は主翼の設計が悪くて操縦性に問題があり、レースでの成績も今ひとつであった。
アメリカでのレースでこの機体を抑えて優勝したのはカーチスR3C−2という機種で、これはアニメの中でライバルの「ドナルド・カーチス」が乗る機体のモデルである。
このドナルド・カーチスにもモデルがいて都市伝説的な話だが、それはかつて西部劇のスター俳優だった「ロナルド・レーガン」元アメリカ大統領だ。
「ポルコ・ロッソ」はなぜ豚になった?
ポルコ・ロッソは、魔女に呪いをかけられたわけでも無いのに豚の姿だ。そもそも「ポルコ・ロッソ」というのはイタリア語で「紅の豚」という意味であり、彼の本名では無い。彼の本名は「マルコ・パゴット」という。
では何故「ポルコ・ロッソ」なのか?それはイタリアの俗語では「豚=豚野郎」で「臆病者」という意味だからだ。
つまりポルコは、自分で自分を臆病者だと考えているわけだ。多分、空軍の時代に何か心に傷を負うようなことがあり、自分を臆病者だと蔑んでしまったのだろう。
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それゆえ自分の意思で自分自身に何らかの呪いを掛けて、豚に変身したのだと考えられる。
自分の誇りを取り戻したような特別な場合には人間の姿に戻るが、しばらくするとまた豚になるのだ。魔女も出ず、呪いかどうかもわからず、儀式や道具も出てこないが、ポルコは自分の意思で人間か豚になれるのだろう。
何とも都市伝説的では無いだろうか。ちなみにポルコの正装である「スーツ+コート+ソフト帽」。これは、ポルコを担当した声優・森山周一郎氏の当たり役「刑事コジャック」の主人公コジャックのスタイルである。
またPagotという名前は、アニメにもなったイタリアの児童向け作品「カリメロ」の作者の名前と同じである。この辺りも都市伝説的だ。
都市伝説ではジーナの賭けの結果をどう説明しているか?
はっきり書いてしまうと明確な説明は無いが…しかし暗示はされていた。エンディングでジーナの白い飛行艇が空を飛ぶシーンがあるが、その時ジーナの店のある島に赤い飛行艇が停まっているのだ。
確かにポルコの飛行艇に見えるし、これでハッピーエンドとしている都市伝説サイトは多い。ただし、彼は単に食事に来ただけかもしれないし、これだけで良い結末だとは判断できない。
紅の豚では物事は説明されないのだ。それはポルコが豚になる経緯や方法から始まって、時代背景や善悪に至るまでほとんど何もかもが説明されていない。
もともと紅の豚は「疲れ切って脳が豆腐のようになった中年男の物語」として作られたので、細かい理屈や整合性は無くて良いのだろう。なにしろ当初は、日本航空の機内映画として始まった30分の短編企画だったのだから。
紅の豚の「舞台」にも都市伝説が…
この作品の舞台は「クロアチア」の「ドブロヴニク」という街をモデルにしている。この街は旧市街が丸ごと世界遺産になっていたり、数多くの映画やドラマの撮影に使われていたりと、まさに「絵になる街」なのだ。
またジブリ作品でも「魔女の宅急便」がこの街を舞台にしている。地理的には、長靴の形をしたイタリア半島の右側の海と言えば分かりやすいと思う。
水の都ヴェネチアはこの細長い海の一番奥に位置し、ドブロヴニクは下方の入り口あたりにある。
しかし、ここは物騒な場所でもあり「ボスニア・ヘルツェゴビナ」「コソボ」「モンテネグロ(旧ユーゴスラビア)」等世界でも指折りの紛争地帯に囲まれている。
さて宮崎監督は、さぞこの街を堪能して舞台に選んだのだろう。と思えば、なんとロケハンには行っていないのだ。イタリアに行った際にはテベレ川流域の山岳都市とローマにしか行っておらず、トブロヴニクには足を踏み入れてさえいない。
当初は戦闘機の空中戦短編アニメを作る予定だったので、ここを舞台にする予定は無かったらしい。そもそも紛争地帯の真ん中をモデルにして空中戦のアニメを作ること自体、不謹慎という話もあり、制作決定までには様々な紆余曲折があったという。
結局、単純明快なアクションムービーではなく中年男が中年女と若い娘に挟まれて葛藤するという、単純明快とは程遠い長編アニメになってしまった…「紅の豚」はある意味で誤解の多いアニメだ。
しかし都市伝説記者としては「中年男の哀しさ」をキーワードとして見れば、このアニメは理解できると考えている。ジブリ作品は子供でも安心して観られると言われるが、やはりこの作品だけは中年向けだ。
この件では監督自身も「呪い」と表現するほど悩まされ続けることになった。ちなみにこの呪いを解いたのは「もののけ姫」だという。
今回の記事では多くの都市伝説の誤りを指摘することになったが、やはりジブリアニメは制作メンバーの個性が大きく出ていることを再確認した。